シーシュポス - Wikipedia シーシュポス 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 ナビゲーションに移動 検索に移動 岩を持ち上げるシーシュポスを描いたアッティカ黒絵式アンフォラ(一部)。ミュンヘン、州立古代美術博物館(en)所蔵。 シーシュポス(古希: Σίσυφος, Sīsyphos, ラテン語: Sisyphus)は、ギリシア神話に登場する人物である。長母音表記を略してシシュポス、シジフォス、シシュフォスとも省略される。コリントスの創建者[1]。徒労を意味する「シーシュポスの岩」で知られる。 シーシュポスはテッサリア王アイオロスとエナレテーの息子で、兄弟にサルモーネウス、アタマースなどがいる[2]。プレイアデスのひとりメロペーを妻とし、グラウコス[1]、オルニュティオーン、テルサンドロス、ハルモスをもうけた[3]。シーシュポスの子のうちグラウコスはベレロポーンの父である[1]。 シーシュポスはエピュラーを創建し、エピュラーは後にコリントスの名で知られるようになった[1]。一説には、メデイアがシーシュポスにコリントスを贈ったともいう[4]。また、ヘーラーに狂気を吹き込まれたアタマースに追われたイーノーとメリケルテースが海に身を投げた事件を追悼してイストミア大祭を創始した[5][6]。 目次 1 神話 1.1 ペイレーネーの泉 1.2 テューロー 1.3 シーシュポスの抵抗 1.4 シーシュポスの岩 1.5 シーシュポスとアウトリュコス 2 系図 3 ギャラリー 4 脚注 4.1 注釈 4.2 脚注 5 参考文献 6 関連項目 神話[編集] アクロコリントス。アソーポースが泉を沸かせたとされる。 アクロコリントス。 ティツィアーノの1548年-1549年ごろの絵画『シシュポス』。プラド美術館所蔵。 フランツ・フォン・シュトゥックの1920年の絵画『シシュポス』。 ペイレーネーの泉[編集] ゼウスがアイギーナを誘拐したとき、シーシュポスはアイギーナの父親である河神アーソーポスに行方を教えたとされる[1][7]。シーシュポスは、娘を捜してコリントスまでやって来たアーソーポスに、「コリントスの城(アクロコリントス)に水の涸れない泉を作ってくれたら、アイギーナのことを教える」と持ちかけた。アーソーポスがペイレーネーの泉を湧き出させたので、シーシュポスは、ゼウスとアイギーナの居所を告げた[8](このときゼウスが恐れて岩に姿を変え、アーソーポスをやり過ごしたことは[9]、アイアコスの項を参照のこと)。 ペイレーネーの泉は、後にベレロポーンがペーガソスを馴らした場所として知られる[10]。 テューロー[編集] 父のアイオロスが死ぬと、シーシュポスの兄弟であるサルモーネウスが、その跡を継いでテッサリアー王となった。 シーシュポスは、このことに腹を立て、デルポイの神託所に伺いを立てた。与えられたお告げは、「おまえの姪と交わって子供をもうければ、その子供たちが恨みを晴らしてくれるだろう」というものだった。そこで、シーシュポスは、サルモーネウスの娘テューローを誘惑した。テューローは、やがてシーシュポスの行為が自分への愛情からではなく、サルモーネウスへの憎しみからであることに気づき、生まれた2人の子供を自分の手で殺した[11][12][13][注釈 1]。 シーシュポスの抵抗[編集] ゼウスは、シーシュポスをタルタロスに連行するようタナトスに命じた。その理由として告げ口の恨みがあった[1][8](ゼウスの命を受けたのはタナトスではなくハーデースだという異説もある[14])。 しかし、シーシュポスは言葉巧みにタナトスが持ってきた手錠の使い方を教えてくれと頼み、これにまんまと引っかかったタナトスが自分の手で実演してみせると、いきなり手錠に鍵をかけてしまった。タナトスは、死の神であると同時に死の概念そのものであった。そのため、彼がシーシュポスの家から出られなくなると、首を切られた者も八つ裂きに処された者も、誰も死ぬことができなくなった。このことで一番困ったのは、アレースである。自分の権利を侵されそうになったアレースは、タナトスを助け出し、シーシュポスを捕らえた。 その間、シーシュポスは、妻のメロペーに、決して自分の葬式を出してはならないと言い含めておいた。冥府に連れてこられたシーシュポスは、ペルセポネーに葬式が済んでいないことを訴え、自分を省みない妻に復讐するために三日間だけ生き返らせてくれと頼んだ。冥府から戻ったシーシュポスは、ペルセポネーとの約束を反故にしてこの世に居座った[15]。やむなくヘルメースがシーシュポスを力ずくで連れ戻した。 シーシュポスの岩[編集] シーシュポスは神々を二度までも欺いた罰を受けることになった。彼はタルタロスで巨大な岩を山頂まで上げるよう命じられた(この岩はゼウスが姿を変えたときのものと同じ大きさといわれる)。シーシュポスがあと少しで山頂に届くというところまで岩を押し上げると、岩はその重みで底まで転がり落ちてしまい、この苦行が永遠に繰り返される[16][1]。 このことから「シーシュポスの岩(英:the stone of Sisyphus)」「Sisyphean labor」の語は、日本での「賽の河原」同様に「(果てしない)徒労」を意味する(この「シーシュポスの岩」については、タンタロスにも似た話が伝えられている)。 シーシュポスの末路を恥じたメロペーは、夜空に輝く星の姉妹から離れ自らの姿を隠した[17]。これは紀元前2000年の終わり頃、おうし座のプレアデス星団の星が一つ見えなくなった事実を示しているともいわれる。[要出典] シーシュポスとアウトリュコス[編集] シーシュポスがコリントスにいた頃、その近くにはヘルメースの息子アウトリュコスが住んでいた。彼はシーシュポスの家畜をたびたび盗んでは自分の物にしていた。アウトリュコスは父であるヘルメースから盗んだ家畜の姿を変える力を授かっており、シーシュポスの家畜のうち、角が生えているものは角をなくし、色の黒いものを白くしたりして、盗みが誰の仕業かわからないようにしていた。 シーシュポスは家畜が度々盗まれるのを怪しみ、自分の家畜の蹄の内側に「SS」という頭文字を刻み込んでおいた。ある夜、例によってアウトリュコスが盗みを働いた。翌朝、シーシュポスは自分の家畜小屋から道沿いに蹄の跡が続いているのを見て、近くの人々を呼び出して証人にした。そして、アウトリュコスの家畜小屋で家畜の蹄の内側を確認すると、果たしてSSの文字があった。 アウトリュコスは知らとぼけて証人たちと口論を始める。その間、シーシュポスはアウトリュコスの娘でラーエルテースの妻となっていたアンティクレイアと交わった。こうして生まれたのがオデュッセウスである。オデュッセウスの抜け目のなさは、アウトリュコスとシーシュポスの2人から受け継いだのだといわれる[18]。 系図[編集]                     アイオロス   アトラース                                                                 シーシュポス   メロペー                                                                                                                                                                     テルサンドロス                                 オルニュティオーン               ニーソス                                       ハルモス                                                                                 コローノス   ハリアルトス                         ポーコス   トアース   ポセイドーン   エウリュノメー   グラウコス                                                                                                                             アレース   クリューセー       ポセイドーン   クリューソゴネイア       ダーモポーン       ベレロポーン       ピロノエー                                                                                                                                                               プレギュアース               クリューセース           プロポダース       イーサンドロス   ヒッポロコス   ゼウス   ラーオダメイア                                                                                                                       アポローン   コローニス   イスキュス       ミニュアース       ドーリダース   ヒュアンティダース           グラウコス       サルペードーン                                                                                                                   アスクレーピオス       オルコメノス   ピュラコス   クリュメネー   イーアソス   ミニュアデス                                                                                                           マカーオーン   ポダレイリオス           イーピクロス   アルキメデー   アタランテー   ギャラリー[編集] ピエトロ・デッラ・ベッキア(英語版) 1660年代初頭 アントニオ・ザンキ(英語版) 1660年頃-1665年頃 マウリッツハイス美術館所蔵 ホセ・デ・リベーラ 17世紀 プラド美術館所蔵 脚注[編集] 注釈[編集] ^ ヒュギーヌス(239話)によれば、テューローはアポローンの神託でシーシュポスの本心に気づいたことになっている。 脚注[編集] ^ a b c d e f g アポロドーロス、1巻9・3。 ^ アポロドーロス、1巻7・3。 ^ パウサニアス、2巻4・3。 ^ パウサニアス、2巻3・11。 ^ アポロドーロス、3巻4・3。 ^ パウサニアス、2巻1・3。 ^ アポロドーロス、3巻12・6。 ^ a b パウサニアス、2巻5・1。 ^ ロバート・グレーヴス、66話b。 ^ ピンダロス『オリュンピア祝勝歌』第13歌63行-78行。 ^ ヒュギーヌス、60話。 ^ ヒュギーヌス、239話。 ^ ヒュギーヌス、254話。 ^ ロバート・グレーヴス、67話g。 ^ テオグニス、703(カール・ケレーニイ『ギリシアの神話 英雄の時代』邦訳、p.75-76。 ^ ホメーロス『オデュッセイア』11巻593行-600行。 ^ ロバート・グレーヴス、67話j。 ^ ロバート・グレーヴス、67話c。 参考文献[編集] アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫(1953年) 『オデュッセイア/アルゴナウティカ』松平千秋・岡道男訳、講談社(1982年) パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎(1991年) ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照男訳、講談社学術文庫(2005年) 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』、岩波書店(1960年) カール・ケレーニイ『ギリシアの神話 英雄の時代』植田兼義訳、中公文庫(1985年) ロバート・グレーヴス『ギリシア神話 (上)』高杉一郎訳、紀伊国屋書店(1962年) 関連項目[編集] ウィキメディア・コモンズには、シーシュポスに関連するメディアがあります。 シーシュポスの神話 - アルベール・カミュ アクロコリントス イストミア大祭 表 話 編 歴 ギリシア神話 神々 オリュンポス十二神 ゼウス ヘーラー アテーナー アポローン アプロディーテー アレース アルテミス デーメーテール ヘーパイストス ヘルメース ポセイドーン ヘスティアー (ディオニューソス) ティーターン神族 ティーターン十二神 オーケアノス コイオス クレイオス ヒュペリーオーン イーアペトス クロノス レアー テイアー テミス ムネーモシュネー ポイベー テーテュース ティーターンの後裔 ヘーリオス セレーネー エーオース アストライオス レートー アステリアー ペルセース アトラース プロメーテウス エピメーテウス メノイティオス パラス ポースポロス ヘスペロス ヘカテー 原初の神々 カオス ガイア アナンケー タルタロス エロース パネース エレボス ニュクス アイテール ヘーメラー ウーラノス ウーレアー ポントス / タラッサ アイオーン / クロノス 冥界の神々 (クトニオス) ハーデース ペルセポネー ヘカテー エリーニュス アレークトー ティーシポネー メガイラ ミーノース ラダマンテュス アイアコス カローン ステュクス レーテー タナトス ヒュプノス モルペウス パンタソス ポベートール その他の神々 オリュンポスに 住む神々 アスクレーピオス エイレイテュイア イーリス ヘーベー ヘーラクレース ハルモニアー ムーサ カリオペー クレイオー エウテルペー タレイア メルポメネー テルプシコラー エラトー ポリュムニアー ウーラニアー ホーラ エウノミアー ディケー エイレーネー タロー アウクソー カルポー エウポリアー オルトシアー ペルーサー モイラ クロートー ラケシス アトロポス カリス アグライアー エウプロシュネー タレイア パーシテアー カレー カリス エリス エニューオー ニーケー ビアー クラトス ゼーロス その他 ヘカトンケイル キュクロープス アルゲース(英語版) ステロペース(英語版) ブロンテース(英語版) アストライアー アーテー アドラステイアー アイオロス アネモイ ネメシス アパテー ヘスペリス ピロテース ケール ゲーラス モロス オネイロス パーン アリスタイオス プリアーポス アクリュース ニュンペー オーケアニス ペイトー エーレクトラー ドーリス ウーラニアー エウリュノメー クリュメネー カリロエー イデュイア ディオーネー ポリュドーラー プルートー ペルセーイス エウローペー メーティス クリューセーイス アシアー カリュプソー テュケー ステュクス ネーレーイス アウトノエー アガウエー アムピトリーテー アレトゥーサ エウリュディケー オーレイテュイア ガラテイア カリュプソー クリュメネー テティス ドーリス プサマテー プロノエー ペルーサ パーシテアー ナーイアス アイグレー アレトゥーサ カスタリア カリロエー クレウーサ サルマキス ステュクス ハルピンナ プラークシテアー メンテー レーテー プレイアデス マイア エーレクトラー ターユゲテー アルキュオネー ケライノー ステロペー メロペー ヘスペリデス アイグレー エリュテイア ヘスペレトゥーサ ヘスペリアー アレトゥーサ その他 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